Q&A

ひきこもりについて知りたい

Q:ひきこもりやすい性格ってありますか?
A:「こういう性格は絶対大丈夫」ということはなかなか言いにくく、ひきこもることは誰にでもありえるものです。例えば、極端に内向的であるとか、非社交的で友人関係がほとんどない場合などは、そうでない人に比べ、ひきこもり状態になりやすい傾向があるようです。しかし、もともと活発だった社交的な人が、ふとしたことから何年もひきこもってしまうこともよくあります。
Q:ひきこもりは怠けではないのでしょうか?
A:ひきこもりは怠けや反抗ではありません。ひきこもりの状態は何らかの理由で「元気」や「自信」がなくなっている状態で、表面上は怠けや甘えているように見える人も、強い引け目、挫折感、劣等感などがあり、内心には深い葛藤を抱えていることがほとんどです。
Q:ひきこもりは時間が経てば改善していくのですか?
A:長期化している場合、放置しても改善は見込めません。まずは専門家のアドバイスを求めましょう。

ひきこもりと不登校について知りたい

Q:ひきこもりと不登校は関係があるでしょうか?
A:ひきこもり事例の多くは不登校経験を持っていることが多く、深い関係があるといわれています。
Q:子どもの登校しぶりや欠席が増えています。不登校の前兆でしょうか? 早めに病院へ連れて行ったほうがいいでしょうか?
A:不登校というだけでは必ずしも治療の対象とはならず、慎重に時間をかけて検討する必要があります。思春期は、不安定さが当たり前の時期です。数日学校を欠席した、あるいはちょっと家で物に当たったという理由で精神科に連れてこられる経験自体が、子どもを不安にさせることもあります。本人の状態は本当に治療を必要としているのか、まず家族が相談機関(「第4部支援関係機関情報」参照)に相談してみる事もよいでしょう。

ひきこもりの支援について知りたい

Q:ひきこもり支援をするにあたって、注意すべき大切なことはありますか?
A:ひきこもり支援の前提は「受容的態度」です。受容的態度なくして支援は始まりません。ただし、受容にせよ、待つことにせよ、そこには常に限界があるということを知っておく必要もあります。暴力、金銭については全てを受容する必要はありません。

枠組みの設定について

暴力の枠組み設定
暴力に関する枠組み設定は「いかなる暴力も100%拒否する」、これが唯一の指針です。器物破損についてはケース・バイ・ケースのところがありますが、身体を叩く、殴る、蹴るといった身体的暴力は、どんな些細なものであっても拒否する姿勢で臨んでください。
金銭の枠組み設定
要求があるときに希望額を与えるのではなく、月のお小遣いを一定にすることが大切です。
(詳細はお小遣いのポイントを参照してください。)
Q:ひきこもりについて、親だけが相談することに意義はあるのでしょうか?
A:たとえ本人不在であっても、適切な対応の指導を受けることによって親の態度が変わるだけでも、状況が好転することがありえます。また、現状が本当に支援の対象であるかどうかを、親と支援者で検討し、吟味してから働きかけを始めることも有効でしょう。

ひきこもりの本人への関わり方について知りたい

Q:ひきこもっている本人との対応のコツを一言で言うとどういうことでしょう?
A:家族の対応の目標は「本人が安心してひきこもれる環境づくり」です。本人は自分の状態に引け目を感じ、抜け出したいと十分に苦しんでいます。家族がそれ以上の苦しみや葛藤を与えることがないように心がけることが大切です。安心させるためには、会話を通じて本人に関心を向け続けること、よいコミュニケーションが最大の安心の源です。
Q:本人を安心させる、よいコミュニケーションとはどういうものですか?
A:会話で大切なことは、共感です。共感とは「相手の身になってみる」ということです。全く同じ経験をしていなくても、自分が孤独だったときや惨めだった時期のことをよく思い出して接するなど、本人の気持ちを分かろうとすることが大切です。
Q:本人との会話のときの禁句はありますか?
A:話題の選択は大事なポイントです。とりわけ言ってはいけないこと、「禁句」というのがいくつかあります。ここでは具体的にあげていきます。
  1. 「将来」の話「あなたは本当は何がしたいの」という問いかけは本人を追い詰めるだけの質問です。本人にとって、将来の具体的な目標を持つことは難しく、「未来」とは「不安」の同義語であるといってもよいくらいです。
  2. 「学校」「仕事」、同世代の友人の噂話本人と同世代とを比較するような話は、そのようなつもりでなくとも、会話の端々に「それに比べてあなたは」という意味を本人は聞き取ってしまいます。例えばー「あなたの同級生の○○さんが結婚した」「△△君が就職した」-なども代表的な禁句です。
  3. 「議論」と「説得」理詰めで「正しさ」を追求し始めたら、ひきこもっている人は圧倒的に分が悪い立場です。弱い立場の本人にも拒否する権利を残しておくために、そういったやりとりはできるだけ避けるべきでしょう。
Q:本人を刺激しないで話すとすると、どんな話題がよいのでしょうか?
A:まず時事的な話題は話しやすいでしょう。例えばニュースの話、芸能界の話、スポーツの話。こういう話題は、本人が置かれている状況から距離がありますから、どんどん話してかまいません。そうは言っても、「ひきこもり」や「少年犯罪」など、本人が自分と関連づけそうな話題は避けるべきです。他にも、ペットを飼い始めたら会話が増えたといった例もあります。
Q:家の手伝いや犬の散歩などを本人に頼んでもよいですか?
A:かまいません。一方通行ではない、相互性のあるやりとりが可能であるなら、手伝いを頼んだり、何か困ったことがあったら注意したりなど、ごく常識的に接してよいです。お願い事を本人が拒否したり、無言で返事がなかったりした場合は、説得したりはせず、しばらく時間を置いたほうがいいでしょう。無理に「~しなさい」と強制するのではなく、「もしよければ~してくれると助かる」といったような言葉かけを試みてみましょう。
Q:仕事をせず、家にいる子どもに働いて欲しいです。親はどうしたらいいですか?
A:まずは、本人がこれからどうしていきたいかが大切です。働きたいという気持ちがあるけど、どう行動してよいか分からない、上手くいかないということであれば、ひきこもり相談支援センターや保健所などの個別相談で、本人の適応可能な支援を紹介する事もあります(居場所、ハローワークやサポステ、ジョブカフェなど)。本人に働く意思が見られなかったり、家族から意思が分からないときには、まずは家族が継続相談をしたり家族教室への参加を続けていきましょう。
Q:ひきこもりの子どもが「死にたい」といいます。どうしたらいいでしょう?
A:「死にたい」と訴えている人に対しては、「とにかく死んでほしくない」ということを何度も気持ちを込めて繰り返し伝えることです。本人は反発する事もあると思いますが、「親のわがままかもしれないが、あなたには生きていてほしい」という単純素朴な言葉を伝え続けていくことが大切です。

本人の生活上の問題について

Q:だらしない生活を送っている本人に、親が注意、介入してはいけませんか?
A:「生活が不規則」「部屋が汚い」などと注意してそれだけ直そうとしてもひきこもりの本質は見えてきません。直接の迷惑行為でなければ、まず一度は、このような「だらしなさ」をまるごと受け入れることを基本姿勢とするのがよいでしょう。
生活が不規則
昼夜逆転や食生活の乱れは、自律神経のバランスを崩し、心身の状態を悪化させる可能性があるため、できるだけ生活リズムを整えた方が望ましいものです。とはいえ、苦痛感が強い本人にそれを強制することは、ひきこもり状態の悪化や家族との不和につながることもありますので、本人が少し動き出せそうな時に、昼間の家事手伝いをお願いしたり、外出への誘いかけをしてみるのが良いでしょう。
部屋が汚い
部屋の掃除はいかなる場合も、必ず本人の同意を取り付けてから行うのが原則です。どんなに汚い部屋でも、勝手に入り掃除することはやめ、プライバシーを尊重する必要があります。
Q:ひきこもりから「自立」を目指して一人暮らしをさせてもよいでしょうか?
A:「一人暮らしをしていれば、そのうちに否応なしに社会との接点を持つだろう」という理由であれば、よい選択ではありません。それはほとんどの場合、一層徹底したひきこもり状態をもたらすだけで、事態をこじれさす可能性の方が高いです。様々な事情でどうしても同居ができないという場合でも、できるだけ近いアパートなどに本人を住まわせて、頻繁に交流できる状況にしておく必要があるでしょう。
Q:お小遣いを与えたりしたら、仕事をする気がなくなってしまうのではないですか?
A:消費活動は社会参加の第一歩であるため、ひきこもっていてもお小遣いは必要です。ポイントはお小遣いを毎月決められた金額にすることです。本人が罪悪感を持たずに自由に買いたいものを買えるということ、本人自身が金銭管理する事が大切です。

お小遣いのポイント

  1. お小遣いは十分に与える。本人がひきこもっているのは、「怠けたいから」「働きたくないから」ではなくて、「働きたいのに働けないから」です。お小遣いによって仕事をする気がなくなってしまうという心配は、ほぼしなくていいものです。
  2. 金額は一定にする。要求があったら渡すという方法は極端な浪費傾向や、だんだんお金を欲しがらなくなるという危険があります。ひきこもり状態が長期化すると、欲望全般が低下する傾向があります。お金を欲しがらないのは欲望低下のサインとも取れるのです。又、枠組みを守ってもらう代わりに、金銭の使用内容は干渉しないことが大切です。
  3. 金額については、本人と相談して決める。まずお金を計画的に使えるようにすることが目標です。何のためにどのくらいのお金が必要であるかというリストを話し合いながら作ることができれば理想ですが、過去半年から1年間の月平均の額から、それに準じて決定するのも現実的です。
Q:ひきこもり本人がインターネットをすることはいいことですか?
A:パソコンやインターネットは、長くひきこもり状態にあった人にとって、社会との接点を回復する窓口として、非常に大きな意義を持っています。メールであれチャットであれ、家族以外の他人と関われることはとてもよいことです。また、ネットショッピングをするなど社会参加を増やす機会ともなります。
Q:本人が1日中パソコンに向かっていますが、何をしているかわからず不安です。介入していいでしょうか?
A:本人が成人しているのなら、「管理」や「干渉」は最小限、つまり金銭面のコントロールだけに限定して、あまり生活面に介入すべきではありません。ましてや、両親の判断でインターネットを使えない状態にするなど強引な対応は、本人の両親に対する不信感につながりますし、それが原因で暴力行為に至ることもあります。プライバシーを尊重する姿勢を忘れずに対応することが大切となります。

家族の生活について

Q:本人は家にこもって全く外出しようとしません。親だけが外出し、自分の楽しみを持っていてもよいのでしょうか?
A:本人がリラックスできる環境をつくるためには、親自身がしっかりリラックスすることが必要と考え、それぞれが自分の生活をしっかり確保し、楽しむことが大切です。パートや習い事、趣味活動などをある程度意識的に、自分の世界を確保しておくことがよいでしょう。また、親が楽しみの活動をすることは、ひきこもっている本人に対してお手本を示す効果もあります。
Q:ひきこもり本人にきょうだいはどのように関わっていけばいいでしょうか?
A:ひきこもりの対応の主体はあくまで親です。きょうだいができることは雑談につき合う、説教や干渉をしないという程度の協力である場合が多いでしょう。 その他の場面では、きょうだいは自分の都合や趣味を優先して動いてかまいません。 きょうだいの関わりは結婚や就職などによって数年以内に中断してしまう可能性もあります。一過性の濃密な関わりは、中断することで結果的に本人を傷つけることがあります。
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